「韓国で下半身だけの遺体37体」―衝撃の主張を検証する。事実か、それとも誤情報か?

登録者90万人を超える韓国人ユーチューバーが
「韓国で下半身だけの遺体37体発見」「150件の非公開捜査」と主張。
しかし、警察の調査で根拠のない誤情報と判明しました。
中央日報や朝鮮日報など複数の韓国メディアによると、
ソウル地方警察庁のサイバー捜査隊は2025年11月、このユーチューバーを
「虚偽情報流布の疑い」で事情聴取しています。
「参考記事:(中央日報英語版, 朝鮮日報)」
本記事では、無ビザ観光政策との関連、誤情報の拡散メカニズム、警察統計の実態を冷静に検証します。
無ビザ観光と“治安不安”の拡散
2024年後半、韓国政府は観光業の回復を目的に
中国人団体観光客の無ビザ入国を再開しました。
ソウル・釜山など観光地では外国人旅行者が急増しています。
しかしSNS上では、「無ビザで入国した外国人が犯罪を増やしている」という投稿が広がり、
社会の不安を煽るような情報が増えました。
実際、一部では無ビザ入国者による不法滞在や万引き事件などが報告されていますが、
それらはごく限定的な事例であり、
「韓国で下半身だけの遺体が多数発見された」という主張とは直接的な関係がありません。
(参考:Daum News – 無ビザ観光をめぐる社会議論, 2025/10/10)
今回の「下半身遺体37体」動画は、
こうした“治安不安”の雰囲気を利用して拡散されたとみられます。
警察統計を誤読した“数字のトリック”
ユーチューバーは動画の中で、
「韓国では年間7万人以上が行方不明になり、多くが未解決」と主張しました。
しかしこれは、警察庁の統計を意図的に誤って解釈したものです。
韓国の公共データポータル(data.go.kr)に公開されている
「警察庁・失踪児童等及び家出人受理・解除件数」データによると、
2024年に受理された失踪届は合計71,854件。
そのうち**71,703件がすでに“解除(所在確認・届出取り下げ等)”**されており、
**解決率は99.8%**に達しています。
(出典:警察庁 失踪児童等及び家出人 受理・解除件数 / data.go.kr)
つまり、未解決事件はわずか約0.2%に過ぎず、
「大量の未解決=連続事件」という主張は統計の誤読に基づく完全な誤情報でした。
コメント1件から生まれた“フェイクストーリー”
動画内で引用された“証拠”の一つは、匿名アカウントのコメントでした。
「現職検事です。下半身遺体37件、非公開捜査150件以上」
このコメントの投稿者は匿名で、本人確認や所属の裏付けは一切なし。
にもかかわらず、ユーチューバーはこれを“検事の証言”として映像化しました。
実際の確認結果
2025年9月、韓国・忠清南道の泰安(テアン)海水浴場で下半身だけの1体の遺体が発見されたと報じられました。
警察は身元確認と事件性の有無を捜査中ですが、
現時点で外国人犯罪や無ビザ入国者との関連は確認されていません。
この事件は単発的なものであり、
動画で主張されたような“全国で37体の遺体が発見された”という内容を裏付ける証拠は存在しません。
(出典:朝鮮日報, 2025.09.02. 12:20)
つまり、「37件」という数字は依然として根拠のない誇張・捏造情報に過ぎません。
現実の課題と誇張の区別
中国人を中心とした無ビザ観光客の一部が、
韓国国内で問題行動を起こしていることも報じられています。
たとえば、中国人観光客が景福宮でズボンを下ろして排泄する不適切な行為が報じられ、韓国で大きな波紋を呼んでいます。

(出典: 中国人観光客、景福宮でズボンを下ろして排泄行為――“大便テロ”が物議に。)
こうした事例が社会的な議論を呼んでいるのは事実ですが、
それでも「下半身の遺体が37体も見つかるような“崩壊した国”」という描写は、
事実とは大きくかけ離れた誇張表現にすぎません。
韓国社会には課題もありますが、
それを“無秩序な犯罪国家”のように語るのは、
冷静な分析とは言えないでしょう。
発信者は“現地を知らない”
さらに重要なのは、このユーチューバー自身が現在日本で生活しているという点です。
韓国現地を取材したわけでもなく、
SNSの書き込みや海外メディアの記事をもとに映像を構成していました。
つまり、彼の主張には一次情報の裏付けも現場確認も存在しないのです。
それにもかかわらず「韓国では連続的に遺体が発見されている」と断定したことで、
多くの視聴者に誤った印象を与え、偏見を助長しました。
情報発信の場所と環境が異なれば、現実の理解にもギャップが生じます。
SNS時代において、「どこから発信しているのか」を見極めることが
情報の信頼性を判断するうえで不可欠です。
誤情報が与えた影響と教訓
この誤情報は日本語圏にも拡散し、
「韓国=危険」という固定観念を強めました。
しかし、実際のデータや現地の雰囲気はそれとは大きく異なります。
観光・文化交流が回復しつつある今こそ、
センセーショナルな話題に流されず、
事実を確認する冷静な視点が求められます。
正確な情報を選ぶために
一つの動画やコメントだけを信じない
公的統計や報道機関の裏付けを確認する
SNSの拡散スピードよりも、真実を見極める姿勢を
恐怖ではなく理解を、憶測ではなく事実を。
それが、健全な日韓関係を築く第一歩です。


